外壁の工法

外壁の工法

サイディング

サイディングの工法は数種類ありますが、材料や下地材によって違いがあります。ここでは下地材別に工法をご紹介いたします。

柱・間柱・構造用合板に施工する場合

1 土台水切り・防水紙の施工

土台水切りは水平基準墨を出してから取り付けます。通常はカラー鋼板が使用されるケースがほとんどですが、通気水切りやアルミの土台水切りもあります。

防水紙は重ねしろを上下90mm以上、左右150mm以上確保して、タッカーで留めつけます。サッシ、笠木その他防水上必要な他部材との取り合いには防水テープを施工します。この工事が二次防水の役目を果たしますので非常に重要な工事です。

防水紙は遮熱効果のある商品もあります。コストは上がりますが、コストがかかってもとにかく遮熱性能の高い家にしたいという方にはお勧めします。また、商品としては新しい商品ですが、北京五輪会場で採用された実績もあります。

2 胴縁の取り付け(通気金具を使用しない時)

通気層を確保するために胴縁を取り付けます。通気層は主に下記の3つの役割があります。

  • 壁内の結露防止・・・室内の水蒸気は多少は外壁側の壁裏側に侵入します。その部分が密閉されていると、水蒸気は逃げ場がなくなり結露してしまいます。通気層を確保すると水蒸気が外部に放出されますので結露を防止します。
  • 雨水の侵入の抑制・・・シーリングの劣化などで雨水が壁内に侵入する恐れはあります。万が一、水が浸入しても通気層を確保することで侵入した水が外部に排出されます。
  • 遮熱効果・・・外壁はかなりの熱を受けますが、通気層を確保すると通気層内に上昇気流が発生して熱を外部に放出する役割を果たします。実験でも遮熱の働きがあることが確認されています。

胴縁の材料は、ラワン等の腐朽しやすく割れやすい材質は不適当です。JASS 11に規定されているマツ、ベイツガ、ベイマツ、エゾマツ、トドマツ、スギを使用します。

3 サイディングと役物の取り付け

サイディングは材料ごとに規定された釘の必要本数を使用して取り付けます。また、材料の端部からの最低必要寸法も材料ごとに規定されている以上の寸法を確保して取り付けます。

横張りの場合、目地部には窯業の場合、ハットジョイナー、金属の場合ジョイナー下地とキャップを取り付けます。また、水切りと材料との取り合いは10mm程度すき間をあけて施工します。軒裏もしくは棟側まで通気層を取らない場合は、軒天との取り合いに通気見切を使用します。

4 タッチアップ・補修

材料の留めつけが完了したら、釘頭の補修や細かい傷をパテと補修塗料で補修します。広く塗りすぎると後々目立ちますので、極力小さい面積の範囲で補修するようにします。

5 シーリング工事

補修が終わると最後は板と板とのジョイントやサッシ周り、軒天や他部材との取り合いにシーリング工事を行います。シーリングは雨天もしくは接着面が湿っている状態では施工しないようにします。材料は一液性と二液性がありますが、二液性で攪拌が不十分だと接着不良を起こす可能性がありますので、弊社は一液性を推奨しています。

施工手順はまず接着面をきれいに清掃し、ジョイナーが入っていない目地にバックアップ材を詰めます。これは三面接着を防止するためです。三面接着するとシーリングの伸縮性がなくなり剥離の原因となります。次にマスキングテープを貼ってプライマーを塗ります。プライマーの塗り忘れや塗りむらが剥離の原因になることがあるので注意が必要です。

プライマーを塗って30分以上経過すればシーリングの充填です。ただし、6時間以内に充填しなければなりません。充填が完了すればヘラで押さえてマスキングテープをはがして清掃すれば完了です。

モルタル壁に施工する場合

モルタル壁に施工する場合も柱・間柱・構造用合板に施工する場合と大幅には違いませんが、いくつかの違いと注意点がありますので違う箇所をご説明いたします。

1 防水紙は不要

既存のモルタル壁が防水紙の役目を果たしますので、防水紙は不要です。ただし、既存壁にひび割れなど雨水が侵入する恐れのある箇所は、シーリングなどで補修する必要があります。

2 額縁の使用

胴縁と材料の厚みの分だけ、新しい壁が既存外壁面より出てきますので、場合によっては既存のサッシ枠より新しい壁が前面に出てくるケースがあります。そのような時は、既製品もしくは板金加工した額縁を使用して施工します。

3 付帯設備・障害物の撤去・復旧

電気線や外部照明器具、雨どいなどの付帯設備や植木・物置など外壁の施工の障害になるものを撤去して施工を行い、外壁施工完了後に復旧します。撤去出来るものは極力撤去して施工した方がすっきり仕上がります。

4 既存建物の調査

これが一番重要で難しい部分なのですが、既存建物が構造的にどの程度強度があるのかを調査しないと、せっかく大金をはたいてリフォームをしても無駄になってしまう恐れがあります。モルタル壁は元々他の外壁と比較しても重たいので、その分建物の揺れには弱いと言えます。

更にその上に新しい外壁の重量が加わりますので、特に窯業サイディングを施工する場合は注意が必要です。技術的な見地からいえば下記の理由からも外壁を撤去して張り替えるのが望ましいですが、コストがアップしますので判断が難しいところです。

  • モルタル壁はひび割れしやすいので雨水の侵入によって下地が腐食しやすく、ひび割れしてしまうと剥がれやすくなるとともに下地の腐食によって強度の低下、地震の際の剥落につながる
  • 下地の劣化度合いや筋かいの取り付け状態は外部からでは判断出来ないので、判断をするには状態の悪いと思われる箇所の外壁を剥がして診断する必要がある
  • モルタル壁を撤去してサイディングを施工すると、前よりも外壁の重さが減少するので建物の耐震性能は向上する

ただし、構造的に問題のない建物であれば、重ね張りをして耐震性が向上するケースもあります。メーカーによる耐震試験で約1.5倍に耐震性が向上したケースもあります。これはモルタルと違いサイディングはパネルですので、面で建物を支えることが出来るという理由からです。また、遮音性・耐火性・断熱性においては問題なく性能向上が期待出来ます。

大壁工法

大壁工法

大壁とは柱などが壁面の外から見えないような構造のことを言いますが、それに対して真壁は柱などが見える構造のことです。昔の家で今でも真壁の家を見かけることがあるかと思います。ここでいう大壁工法とは、柱などが見えないのはもちろんパネル張り特有の目地が目立ちにくい工法のことです。

この工法で仕上げるとモルタル塗りのような素朴で落ち着いたデザインの外壁に仕上げることが可能です。専用板と目地処理材、目地用のクロスを施工して、その上から弾性塗材で仕上げます。モルタル塗りよりはコストがかかりますが、耐震性の向上や通気工法が標準施工ですので雨漏りやクラックの不安が軽減されます。

各メーカーで塗材の柄が若干違いますが、認定施工店で施工するとメーカーが目地切れの保証をすることも可能です。(ただし、新築物件に限ります。)リフォームでは保証は出ませんが、構造がしっかりした建物であれば新築同様の効果は期待出来ます。

外張り断熱工法

外張り断熱工法

外張り断熱工法とは上記の柱・間柱・構造用合板に施工する場合において、先にボード状の断熱材を張ってから施工する工法です。胴縁の留めつけ方法に違いがあります。

断熱材が柔らかいものなので、外壁の重量を支えるために補助桟を入れたり、長いビスで胴縁を固定する必要があります。

モエン金属胴縁工法

アフター ビフォー

モエン金属胴縁工法とは鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨造(ALC t=100)下地の場合に金属製胴縁と専用ビスを用いて施工するニチハが開発した工法です。今までは、RC造やALC下地の場合サイディングは施工できないというのがネックとなっていましたが、この工法が開発されたので施工可能となりました。(ただし、地域の制限や下地の状況などの制限はあります)

耐震補強壁工法 AT-WALL 壁王

耐震補強壁工法のポイント

この工法はこのたび旭トステム外装が開発したリフォーム専用工法で特許出願中の工法です。

特長としては、サイディングを耐力面材として利用できる仕様となっていて、専用のサイディング材を所定の工法で施工すれば耐震補強が可能な工法となっていることです。

下の図面は「AT-WALL-壁王」を使用した耐震補強の例ですが、サイディングを施工しただけで耐震性を表す構造評点が約3倍に増加しました。

【耐震補強例】

耐震補強壁工法の例 耐震補強壁工法の説明

SAT工法(耐震断熱改修工法)

SAT工法詳細図

SAT工法は、北海道立北方建築総合研究所の共同研究「断熱改修時における外壁の耐震化構法に関する研究(室蘭工業大学・NPO法人住宅外装テクニカルセンター、平成15年~16年)」において基本技術の開発・効果の検証を行い、その後、北海道立北方建築総合研究所の重点研究「北海道の木造住宅の耐震改修促進を目的とした耐震診断・補強効果評価法に関する研究(平成18年~20年度)」において実用化が図られ、(財)日本建築防災協会の技術評価を受けた工法を基本とした耐震・断熱改修工法です。

【SAT工法の特徴】

  • 既存外壁を耐力面材に・・・柱仕口や筋かいとの接合部を補強して耐震性の高い耐力面材にしてしまうので耐震性が向上します
  • 確認申請は不要・・・増改築にあたる工事には確認申請が必要ですが、(財)日本建築防災協会の技術評価を受けているので確認申請が不要です。従って、従来起こっていた建築基準法に合致させるために、増改築部分以外にも手を入れる必要が出てくるので、費用が高騰するという理由で耐震改修工事の「凍結効果」を防ぎやすくなります。
  • 断熱性能の向上・・・気流止めを設置し、壁下からの冷気の流入と軒部分からの暖気の抜けを防止するので、断熱材の性能が十分に発揮されるようになり快適になります。